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東京高等裁判所 昭和48年(ネ)251号 判決

理由

被控訴人の主張する請求原因事実は全部控訴人の認めるところである。

本件手形について控訴人の主張するような受取人欄の記載の変更があつたことは官公署作成部分については成立に争いがなく、その余の部分については《証拠》によつて認めることができる。

受取人欄の記載の変更も手形法第七七条第一項、第六九条の手形の変造に当るものと解するのが相当であるところ《証拠》を綜合すると本件手形二通は控訴人主張のように控訴人から商品代金の支払のために南埼玉三菱電機商品販売株式会社を受取人と記載して振出されたが交付を受けた右訴外会社の熊谷営業所において受領後数日後に盗難にあいその後に何者かによつてインク消しで受取人欄の記載を抹消して新たに株式会社大都物産と記載され、右会社等を経て銭屋実業株式会社に裏書譲渡され、右会社から割引のために被控訴人会社沼津支店に譲渡されたものであることが認められる。変造手形の振出人は手形法第六九条によつて変造前の原文言によつて責任を負うものであるから振出人において右変造の事実を立証したときは変造手形を変造後に取得した手形権利者は振出人に対して手形法第一六条による裏書の連続を主張するのみでは足らず、正当な手形債権取得原因を主張、立証すべきものと解するので、その点について何らの主張、立証のない本件では被控訴人の請求は失当というべきである。よつて右と判断を異にし被控訴人の請求を認容した原判決は失当であり、本件控訴は理由がある

(裁判長裁判官 石田哲一 裁判官 小林定人 関口文吉)

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